2018/12/27
新川理沙
2018/10/23 更新
無性愛とも訳されるアセクシャルですが、セクシャルマイノリティーゆえに誤解を受けやすく、相談しにくい悩みもあるようです。今回は多様な他の性の種類にも触れつつ、日本ではまだまだ知られていないアセクシャルの実態について調査してみました!
レズビアン(女性同性愛)、ゲイ(同性愛の人々、日本では男性同性愛を指すことが多い)、バイセクシュアル(両性愛)、トランスジェンダー(性同一性)。
LGBTは、こういった性的少数者(セクシャルマイノリティ)の頭文字をとった略称です。
最近はテレビや雑誌でも話題になり頻繁に取り上げられていたり、カミングアウトする有名人も増えてきているので、かなり市民権を得た単語と言えるでしょう。
LGBTに限らず、性的少数者の指向には様々なものがあります。
そして、アセクシャル(無性愛)はたくさんある性的指向のひとつとも言われているのです。
では、アセクシャルって一体どういった意味かご存知ですか?
みなさんは、誰かに対して恋愛感情が芽生えますか?それは、友情とも愛情とも違う感情です。
また、誰かに対して性的欲求は起こりますか?人によって欲求の質は様々だと思いますが、例えば「肌に触れたい」「キスしたい」「セックスしたい」といったような、性の満足につながる欲求です。
他者に対して、こういった恋愛感情や性欲が起こるのは、当たり前のように感じますよね。なぜなら、今の世の中は「思春期になるとこういった感情や欲求が自然と起こる」という前提のもとに成り立っているからです。
しかし、アセクシャル(無性愛)の方々は、いかなるジェンダーの他者に対して、恋愛感情が芽生えなかったり、性的な欲求が起きない(もしくは欲求が少ない)と言われます。
これは、異性愛、同性愛、両性愛に並ぶ性質と言われることもあり、「アセク」「A(エー)セク」「エイセク」と略される場合があります。
ノンセクシャル(非性愛)とは「他者に対して性的欲求は抱かないが、恋愛感情は抱く」人のことです。
このノンセクシャル(非性愛)は「ノンセク」と略されることがあります。
つまり、アセクシャル(無性愛)は他者に対して性的欲求も恋愛感情も持ちません。
一方でノンセクシャル(非性愛)は他者に対して性的欲求は起きませんが恋愛感情は持ちます。
ノンセクシャルとアセクシャルで共通しているのは「他者に対して性欲が起こらない」という点です。
違うところは「恋愛感情を抱くかどうか」という点です。
「もしかして自分がそうかもしれない」と思った時、恋愛感情がない場合はアセクシャル(無性愛)、恋愛感情がある場合はノンセクシャル(非性愛)と考えてみてください。
。
実は「ノンセクシャル」というのは、日本でしか使われていない単語なんです。
日本の場合、他者への恋愛感情があれば「ノンセクシャル」、恋愛感情がなければ「アセクシャル」という風に、言葉がきっぱりと分かれています。
一方海外の場合は、恋愛感情があってもなくても全員「アセクシャル」と呼びます。ノンセクシャルとの使い分けはありません。
そして、その中でもとりわけ恋愛感情を抱く人々のことを「ロマンティック・エイセクシュアル」と分類することができます。このロマンティック・エイセクシャルが日本でいうところの「ノンセクシャル」に当たる単語と言えるでしょう。
つまり、アセクシャルとノンセクシャルの意味の違いをまとめるとこんな感じです。
日本の場合、アセクシャル(無性愛)は他者に対して性欲も恋愛感情も起こりません。一方、ノンセクシュアル(非性愛)は他者に対して性欲は起こりませんが、恋愛感情は持つ、ということです。
海外の場合、アセクシャルは他者に対して性欲が起こりません(恋愛感情の有無は問わない)。一方、ロマンティック・エイセクシュアルは他者に対して性欲は起こりませんが、恋愛感情は持つ、ということです。
ノンセクシャルという言葉を海外で使う場合は、通じない可能性があります。これらを踏まえた上で、使い分けには気をつけたほうがいいかもしれないですね。
ノンセクシャルと違い、アセクシャルは恋愛感情も性的欲求も持たないため「愛情がない=冷たい人」と思われがちのようです。
では、愛情とは恋愛だけに注がれるものでしょうか?答えは「いいえ」ですよね。
例えば、恋人、親友、家族、ペット、趣味など、それぞれに向けられる友情や愛情には色んな意味がありますよね。
つまり、アセクシャルが「恋愛感情を抱かないから愛情を持たない」と考えるのは、とてもナンセンスです。
人の価値観を、全て恋愛話の延長で計ろうとするのはもったいないことです。
愛情=恋愛という偏った考えを持っていると、セクシャルマイノリティへの誤解を産んでしまう原因になってしまうため、控えたほうがいいかもしれませんね。
性欲とは、性的な満足を求める本能です。
欲求の満足と一口に言っても、人ぞれぞれ違いますよね。好みや年齢によっても満足の質の差はかなり出てくると思います。
アセクシャルの場合も「性欲がない」とひとくくりにするのではなく、それぞれ「性欲(の質)に差がある」と言ったほうがいいのかと思います。
例えば、スキンシップ、性的な行為、快感、身体的反応など。これらは「性欲を満足させるために必要」ですか?もしかしたら、大多数の方々が必要なものだろうと考えるかもしれません。
ただ、アセクシャルの人にとって、そういったものは必要だとは限りません。
アセクシャルの場合「性欲がない=セックスをしない」とは結び付きません。
アセクシャルの方々の欲求は「興味がある相手と手を握る必要がない」「無関心だがパートナーのためにセックスをする」「好奇心で性行為を試す」「自身の性欲に嫌悪感を抱く」「自慰やセックスはするが生理現象のようなもので性的欲求とは別物」など、人によって種類が違います。
もちろん真逆の場合も、当てはまらない場合もあるでしょう。
この世界のすべての人が自分と同じような指向や頻度でセックスを重ねるか?と聞かれたら、もちろん答えは「いいえ」ですよね。
つまりアセクシャルの方々も「性欲に差がある」ということです。
「性欲がない」とひとくくりにされがちですが、人それぞれ違うのです。
無性愛者は世界人口の1%ほどいるとも言われています。しかし、比較的新しい指向の分野のため、研究も認知もまだまだ広まっていないようです。
世の中にセクシャルマイノリティへの理解関心が広まったと言え、まだまだ社会は「異性を好きになること」が前提ということに変わりがないように思います。
そのため、アセクシャルの方々にはこんな悩みもあります。
世間話をすると恋愛の話題になることは結構多いですよね。「彼氏(彼女)はいる?」といった何気ない質問でも、セクシャルマイノリティの人々にとって答えるのが難しい場合があります。
話を振る側としては「好きな人や付き合ってる人はいる?」など性別にとらわれない質問の仕方をすると、もっと色んな人が楽しく恋愛の話題に参加できるかもしれないですね。
恋愛しないことを「もったいない」と言う人が、恋愛を大切にしているのは分かります。また、アセクシャルが世間にさほど認知されていないのも事実です。しかし「もったいない」の一言で相手の考えを遮断することは、それこそもったいないことです。
人それぞれの価値観を受け入れることは人間関係を築く上で大切ですよね。これは相手がアセクシャルでなくても同じことが言えるでしょう。
セクシャルマイノリティの理解は広まりつつあるものの、まだまだ「アセクシャル」という言葉を聞いたことがない方も多いと思います。広く認知されているLGBTとは違い、アセクシャルの方々は余計に疎外感を感じていることもあるようです。
アセクシャルといっても個々の差があります。また、研究や認知がそれほど進んでいないため「アセクシャル」と「人を好きになったことがない」との境界は曖昧と言えるでしょう。
そのためはっきりとアセクシャルの診断をしづらいのが現状です。
診断や世間の考えを気にせずに自分は自分と割り切れればいいのですが、それが完璧にできる人は少ないでしょう。
自分がアセクシャルか分からない…と悩んでいる中で、より一層自分のことを知りたいという方のために「アセクシャルの可能性に繋がる特徴」をチェック診断として挙げていきます。
アセクシャルは恋愛感情を抱かないため、他者に対して友情や愛情とも違う感情を抱かない場合はアセクシャルの可能性があると言えるでしょう。
アセクシャルは他者に対する性的な欲求が起きません。欲求がない、もしくは少ない場合はアセクシャルの可能性があると言えるでしょう。
性的な行為に関心がなかったり、自身の行為に嫌悪感を抱く場合もあります。
恋愛感情を持たないので恋愛がテーマのストーリーにはピンときません。
恋愛感情や性欲が起こらないので、こういった話題に周囲との温度差があります。空気を壊さないために合わせている場合もあるようです。
性欲がなくても生活に支障がでるわけではありませんよね。パートナーに「拒まれている」などと誤解されたら話は別ですが。しばしば性的欲求低下障害(HSDD)と無性愛は比較されることがあるようですが、HSDDのように元々あったものが無くなったわけではないので性欲がないことにストレスを感じにくいようです。だって元々持ち合わせていないですから。
こういったものに心当たりがある場合は、もしかしたらアセクシャルの可能性があるかもしれないですね。
以上、アセクシャルの可能性に繋がる特徴をチェック診断として挙げました。
認知が広がっていないためはっきりと診断するのは難しく、全てが当てはまるわけでもありません。
しかし、少しでも診断したいという方の参考になればいいと思います。
人がいればその数だけ個性があるように、人の数だけ性の形があります。
アセクシャルやノンセクシャル以外にも、様々な性の形が存在していますが、世間で認知されていない性の指向もたくさんあります。
そういった性の形をいくつか紹介していきたいと思います。
他者に性的に惹かれないが、恋愛感情を持つ。対義語はエイロマンティック(aromantic)
他者に恋愛感情を殆ど、あるいは全く持たない。対義語はロマンティック(romantic)
先天性のものとされている。
両性に対して恋愛感情を持つ(性的には惹かれない)
異性に対して恋愛感情を持つ。
同性に恋愛感情を持つ。
女性に対してのみ恋愛感情を持つ。ガイネロマンティック(gyneromantic)とも。
男性に対してのみ恋愛感情を持つ。
あらゆる性(男性、女性、男女に適合しない性)に対して性的に惹かれる。
複数のジェンダーに対して性的に惹かれる。パンロマンティックとは違い、一部のジェンダーには惹かれない。
アセクシャル(無性愛)とそうでない状態の中間。恋愛的、性的な魅力を感じる場合もある。
グレーA、デミロマンス、デミセクシュアルまたはセミセクシュアルなどとも言われる。
グレーロマンティックのうち、強く情緒的に結びついた相手に対してのみ性的に惹かれたり、恋愛感情を持つことがある。
こういった性的、恋愛的指向は人によっては流動的に変化する可能性があります。つまり、性的欲求は人や環境によっても変化していく可能性があるということです。
当てはまるものがない…と悩んでいる方がいたとしても、今後こういった性的指向は、言葉の組み合わせ方で全く違う意味を表したり、新しい種類も増えていくこともあると思われます。
アセクシャルやノンセクシャルといったセクシャルマイノリティの方々は、本音を言えずに誤解を受けたり、理解を得られずに悩んでいる方もいる場合があるかもしれません。
なぜなら、個人の性の指向を尊重するにあたって、まだまだ日本は性に対して理解が乏しいです。
もし、そんな世間の声に押しつぶされて、自分の気持ちを押し殺すことになったらもったいないと思いませんか?
「思春期になると恋愛感情が芽生える」「結婚はするべき」「好きな人とセックスしたい」「女は子供を産むべき」など、世間大多数の価値観や前提は、必ずしも自分にまるっと当てはまるものではありません。そして、人に当てはめるべきものでもないのです。
生きていく上で、恋愛感情や性的欲求は絶対に必要なものではありませんよね?
恋愛や性欲を取ったら何も残らないなんて考えはもったいないと思います。なぜならば、家族、友人、仕事、ペット、趣味など…愛情を注ぐ対象はいくらでもあるからです!
細かいことは気にせず「自分らしく」生きていきましょう。
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